今年読んでよかった本

よいお年を、はもうやったのですがTAKESANさんのエントリに触発されて最後にもう一つ。言語学関係の、しかし一般向けに書かれた本がほとんどです。これを書くのは少し迷った。というのは、下記に取り上げたのはほとんどFBで絶賛してきたので、リアル知り合いがこれを読むとばれてしまうからなのだが、まあもういいよね、ばれても。ばらことかrosechild名で書いてきたのは何が恥ずかしいって言語学のことをほとんどわかってない癖に偉そうなことを書き散らしているのが非常に恥ずかしいのだけど、そんなこと言ってたらこれから何も発言できなくなる。恥多き人生に一つ二つ恥ずかしいことが増えたところでどうだというのだろう。大体そもそもリアルの方がもっと恥ずかしい人生なのに何を今更、と言い訳はこのぐらいにして。

日常言語に潜む音法則の世界 (開拓社言語・文化選書)

日常言語に潜む音法則の世界 (開拓社言語・文化選書)

音韻論 (朝倉日英対照言語学シリーズ)

音韻論 (朝倉日英対照言語学シリーズ)

今はこういう良書がよりどりみどりで有難い限りです。しかしこれは2冊とも、最低限の言語学の概論を既に勉強した人の2歩目3歩目向き。「日常言語に潜む〜」については、日本語の音に関していろいろ面白いネタがあるということは繰り返しどこでも言われていることだけれど、それを鮮やかにすっきりまとめる手法に痺れる。時々挟まれる比喩も妙に面白い。「音韻論」は図書館で見かけて何気なく手に取ったところあまりのわかりやすさに感動して借りるのやめて即買いました。ところで、以前ブクマでid:dlitさんはなんで「ドリット」さんになりid:ublftboさんが「ウブルフトボ」さんになるのはなぜ、という話をしていたのですが、この2冊にほぼ答えは書いてあります。私の疑問は外国語からの借用語と違って、dlitとかublftboなんて単語はもともとどこにもないから、そもそも入力がないところへ、まず日本語で勝手読みをする必要がありその勝手読みはどこから出てくるのだというようなものだったのですが、最適性理論だったら別にドリトでもドラトでもダリツでもなんでも入れときゃ最適なのが出てくるのかな。で、dlitさんとブクマで会話してublftboさんのtとbの間にdlitさんはuを入れる、つまり「ウブルフツボ」になるという話をされていたのですが、tのあとにuを入れると日本語では[tsu]になってしまい音価が変わってしまうのでこれを避けるためにtの後はoが一般的であるらしい。すなわちdlitさんの挿入は有標であるというかマイノリティである。と田中先生が言ってました。ような気がする。ともあれ、この2冊には大変お世話になりました。

構造から見る日本語文法 (開拓社言語・文化選書)

構造から見る日本語文法 (開拓社言語・文化選書)

必ずしもチョムスキーを信奉する必要はないけれど、少なくとも言語を考えるのに構造から目をそらすことはできないよね、ということを再認識させられた。今までこういう微妙に苦手意識を持っている対象から逃げていたのが人生の間違いであったと気づいた2014年でありました。初心者にもわかりやすく書かれています。

旅するニホンゴ――異言語との出会いが変えたもの (そうだったんだ!日本語)

旅するニホンゴ――異言語との出会いが変えたもの (そうだったんだ!日本語)

このシリーズは全部読みたいけどまだほとんど読めていない。私はピジンクレオール言語とそして自分の方言とに強い関心を持っていたのだけれど、接触言語という観点からその2つが自分の中ではっきりと一つのテーマとしてつながりました。読みやすくて新しい視点を与えてくれる本。

ヴァーチャル日本語 役割語の謎 (もっと知りたい!日本語)

ヴァーチャル日本語 役割語の謎 (もっと知りたい!日本語)

「ヴァーチャル〜」を今まで読んでいなかったというのは不勉強の謗りを免れない。しかし不勉強というのは人生を損しているのだな、とつくづく思う。「コレモ日本語〜」も衝撃的だった。周りの景色が変わって見えた。

これだけ専門書。実はまだ全部は読んでないのだけれど、この正月休みをかけて精読します。今後の人生の道標ともなるはずの本です。

それでは改めまして、今年もお世話になりました。皆様よいお年をお迎えください。