みみずくからの伝言からの伝言

先日来の上野千鶴子氏が法律婚をしていた件について、彼女に少なからず影響を受けた40年近い読者でありフェミニストを自称する一人として、なんか書くといいながら、ブックマークの短いコメント以外まだ何も書いていないので、書こうとしてブログを開いた。私は下書きをしていたのだが、それを消してしまったということを忘れて、下書きを開いたところ、その原稿はなくて、かわりに今はなきteacupブログへの追悼文の下書きが出てきた。これは全く別の今回とはなんの関係もない話なのだが、記録のためにここに記しておく。teacupブログでは楽しくも馬鹿馬鹿しいことを書き散らしていたので、こんな深刻な話はこれ一件きりである。あのブログをご記憶の方がいらしたら、これの関しては全く楽しい話でも面白い話でもない深刻な話であることをご諒解願う。私に心の傷はほとんど残っていないが、もっと深刻な被害を受けた人にはそうではないだろう。性犯罪未遂被害者の記録である。上野氏の件についてはまたそのうちに書くと思う。以下、下書きにあったものに少し手を入れた「みみずくからの伝言」からの伝言である

 

懐かしいね...

と自分で懐かしがってたら世話ないんですが、そういえばあれteacupだから消えてたことに今気づいた。

あれは、ほぼ「水からの伝言」批判に特化したブログだったのでご本尊も亡くなった今、消えてもどうでもいいとも言えるが今もこの種の、水伝のような言論はますます隆盛ではあるのであってもよかった。しかしもっと質の高い批判はいくらもあろうしこれからも出てくるだろう。はてなに移る前ごろには身辺雑記とアホネタブログと化して一部のアホな人を中心とする奇特な読者のおかげで楽しくやっていた。で、書くことの99%は消えてもよいのだが、一つだけ記録としてあそこにしか書いていなかったことをここに思い出しながら転記しておく。こういうことがあったという事実だけで、今更それを糾弾しようという訳ではないが、当時の世相やら、女性がどういう言葉を投げつけられて生きてきたかという話の一つである。

 

以下、暴行未遂事件の話になりますのでフラッシュバック等ご注意ください。80年代後半ごろにあった話。

 

経緯は省くが見知らぬ男に布団に乗られて「命が惜しかったら一回だけやらせろ」と言われたことがある。私は頷いて、言うことを聞くふりをして、男がズボンを下ろし始めた一瞬の隙に布団を飛び出して裸足でたまたま近隣にあった警察に駆け込んだ。パトカーの中で警官は「告訴しないよね?告訴するとあなたが恥ずかしい思いをするよ」と言った。当時二十歳ぐらいでもう分別もあったけど、その場で今暴行男の腕の下から逃げてきてパジャマのままで、私は頷いてしまった。警官は無線で「マルガイ、コクイシないです、マルガイ、コクイシないです」と報告していた。被害者は告訴する意思がないと言ってるんだなとそんな状況でもわかった。

実害はなかったので私には暴行未遂男に対しては当時からあまり印象がない。ただ、あの警官の言葉は一生忘れられない。そして告訴も何もせずにもしかして次のどこかの被害を引き起こしていた可能性もあるという自責の念、それはたとえば犯罪加害者の周りの人が抱くようなものに近いのかもしれない、は消えない。そして、限られた友人などにリアルで話をした中では自分のような経験をして、社会的には何事もなかったこととして生きている人はやはり複数いた。この話を具体的に知っている限られた人の中で、である。せめて「告訴するとあなたが恥ずかしい」というような、恐らくは善意のアドバイスでもあったであろう、警官の認識は現在は変わっていてほしいと思う。一方で今も、仮にそこが変わっていたとしてもたとえば遠方で暮らす親には死ぬまで言えないというような現状は変わっていないであろうとも思う。