NHKで体罰が肯定されていた時代の記憶

中村メイコさんの訃報に接して、三波伸介さんと共演していたNHKの「お笑いオンステージ」を懐かしく思い出した世代である。その中に減点パパという人気コーナーがあった。有名人の子供が出演し、その子供たちの描写に合わせて三波さんが似顔絵を描き、パパが登場、最後には子供が作文を読んでパパが泣く、みたいな、当時大人気といえるコーナーだった。最後の方では少し時代が進んで「減点ファミリー」になった。以下はその「減点ファミリー」なって、時代が少しは進んでからの話だが、エンディングテーマの歌詞に

「ゲンコツもらうとよくわかる、その後なぜだかあったかいよ〜」

という歌詞があった。70年代後半ぐらいの話。ゲンコツ全肯定「そのあとあったかい」とか、殴られる子供にすればふざけんなという話なのだが、当時は全く問題視されることはなかった。

今、それを蒸し返して問題にしようというのではない。今五十代の自分が子供の頃はまだそんな時代であり、それを当然視する社会の中で育ってきた我々は、まだ社会の中枢にいるといってよい。今なら大問題、今ならDV、差別、パワハラ等々であることを私たちはしばしば喜んで懐かしがって、たとえば私自身でも昔のプロ野球選手のめちゃくちゃな暴力ネタなどを喜んで見ている。その反面で現在のプロ野球球団での暴力事件などは許し難いこととして批判している。

今絶対ダメなことは当時だってダメだったんだけど私らにはそれがわかっていなかった。だけど時代が変わって今はもう許されない。いい時代になったし、それが当然である。一方で体罰が当たり前のように許されてきた時代は、ついそこで、そこで育ってきた私らはまだ現役で世代的に大きなパワーを持っている。もしかしたら、いまだにわからない側にいる、いたかもしれない。

ゲンコツがあったかいよ〜という歌詞をNHKがこどもに歌わせていた。若い人にしてみたら大昔のことのように思うかもしれないけれど、つい昨日のように覚えていることを記録しておきたい。