地域とことば:福島の方言は東北方言か?に便乗(読書案内付き)に便乗

dlitさんのエントリに関係ない方向で便乗して1冊だけ本の紹介を。

ええほん 滋賀の方言手控え帖 (淡海文庫)

ええほん 滋賀の方言手控え帖 (淡海文庫)

ほんまゆうたらまいどまいど自分の方言でブログ書いたりしたいんやけんど、なかなかさあちゅうてもでてこんもんやし、ふだんはまあ、関西弁ちゅうんか、関西の言葉をつかうてゆうても大阪あたりの人らがつこてやあるのをまねしてるんやけどな、ほんでも私の育ったとこはけっこう滋賀県の中でも言葉が珍しいちゅうて専門家でもときどき研究してやある人もやあるんやけど、どうしてもな、ほこの人でない人が書かあた文ちゅうのは、ネイティブが見たらこらちゃうでと思うことが多いわけでな、ほんでまあほういうプロの研究を見てもちょっとこれちゃうやろと思うことがちょいちょいあるんやわ。

ほやけどこの本は、プロの研究ちゃうけどほのネイティブチェックちゅうのがものすごいきとどいたるん。著者はネイティブちゃうんやけど、いやもと彦根の人やさかい滋賀県人としてはネイティブやけど彦根では使わあれん湖北の言葉をようけ収録しとかあて、ほの点に関してはネイティブちゃうんやけど、ほんでも明らかにネイティブが確認しとかあるていうのがようわかってな、研究書でもないのにこれはえらいもんやと思いますわ。ほんでこれたまたまなんやけど、アマゾンでみたってもろたらわかるけどこの表紙のイラストな、これ描いてやんすの私の友達やわ。友達ちゅうてももう30年もおうてへんけど中学高校も一緒やったし昔はようしゃべったしほんでほの頃からこの子、て今はおっさんになってやんす訳やけど、この人は絵がうまかってな、イラストみたいなもんも描いてやんたのに今のこのイラストに当時の面影があるんよ。懐かしいわあ、今どうしてやんすやろ。

ほらこの本は学術書ちゃうで。ほんであんま学問的なことは気にせん方がええかもしらんちゅうかほの辺は専門家がせなあかんとこやけどな、これは楽しい用例集やと思たらほらええほんや。ええほんちゅうのは掛け言葉やな。よい本ちゅう意味と「ええで」ちゅう意味とな、「この本ええほん、読んでみ」ちゅうて勧められるわけや。どこがええかええとこをあげとくと、1つは調査票持って調査いったんとちごてほんまの日常生活の中から語彙をひろたるさかい、研究者が来てはい録音させてくださいいうたらどうしても落ちてまうようなふだんのきどらん言葉がひろわれたるわな。これはどうしょうよもない、誰かて偉いせんせが録音機もってきたら緊張してもてふだんつかわんような言葉遣いしてまうやん。たとえば「おん」ていうの、「はい」の意味で載ったるんやけど、こんなん先生に対してとか絶対つかわへん言葉やけどふだんやったらものすごよう使うんやけど今までの研究書には載ったらせん、ようこんなんひろて載せてくれやあたとほんま、母語話者としてありがたい思いますわ。これが一つやろ、ほって2つ目はネタとしても秀逸やわな。舞姫の湖北言葉訳とかな、こんなん森鴎外聞いたら怒りよるで。

我を救ひ玉へ、君。わが恥なき人とならんを。母はわが彼の言葉に従はねばとて、我を打ちき。父は死にたり。明日は葬らではかなはぬに、家に一銭の貯(たくわえ)だになし。

おまん、うち助けてえな。うち恥知らずになってまうんや。おかちゃんはあいつの言うとおりにせなんだらあかんちゅうて、うちをしばかはるんや。お父ちゃんが死なったさかい、明日葬式せなあかんのに、家には一銭もあらへん。もう、ほっこりやわ。」(p.136)

どやろ、方言がわからん人が読んでもおもしろないかなあ。私やったらしらん方言でもどこでもよその言葉聞いたり読んだりするの好きでどもならんのやけど。ちゅうわけでこの本ええほん、よんでみ。