楽しけりゃいいんだよって楽しくねーよ!

血液型占いに科学的根拠がないのは知ってるんだけどね、コミュニケーションに絶対必要だから仕方ないよねみたいな記事を批判しようと思っているのですが、言及先はその前の記事

例えば、国によっては国民の血液型が1種類しかなく、そもそも血液型が性格判断の材料として機能しないケースもあります。

なんてことを書かれています。そのデータは一体どこから、というか批判する気力が萎えていくのですががんばろう。

前の記事との二段構えで、差別性はなーんにも認識してないよ、科学的根拠なくたって楽しけりゃいいじゃん、というお気楽な血液型論が展開されるのだが、このカジュアルな血液型差別はまた別のステレオタイプをも内包している。

男性のみなさん、以下のような会話をしたことはありませんか?
(中略)
「あのさ、血液型性格診断ってウソらしいよ。科学的に無根拠なんだって」
「え?そうなの?」
「それにオレ、『何型に見える』とかそういうの興味ないんだよね」
「そっか…」

会話が終わってしまいました。

理系院卒・Aさん(30才)の場合
(中略)
相手の血液型を当てるのが一番ですが、その可能性は1/4。その確率を高めるために血液型を聞かれたらこう答えるようにしています。

「O型っぽいA型かな!」(AB型っぽいB型かな!)

仮に「O型っぽいA型かな!」と答えて相手女性がA型だった場合、「すごいね!正解!」となりますし、O型だった場合、すかさず自分から「やっぱり!O型に見えたんだよね」と続ければさも「当たった」ようになります。

東大卒・某省庁勤務Bさん(28才)の場合
(中略)
「へぇ、元カノが全員B型だったんだよね」

こう答えるんです。すると、さも自分が相手に好意を抱いているような印象を与えるんです。この回答、相手に対して悪い印象は与えません。

血液型の話題が大好きなのは女子。科学的な根拠がないことを知らず、根拠がないと言われて「え、そうなの?」とかいうのは女の子。根拠がないを指摘するのは男子。「やっぱり!」と「意外!」という2択の反応しちゃうのが女子。「O型っぽいA型かな!」と言われて「すごいね!正解!」と予測通りの反応をしてくるアホな女子に話を合わせてあ、げ、るのがクールな理系男子。ここでアホといってるのは、血液型性格診断を信じているアホという意味ではなく、下心みえみえのくだらない話の振り方してくる相手にそれでも「すごいね!正解!」とか ヨイショしちゃうようなアホという意味です。
理系院卒・Aさん(30才)、東大卒・某省庁勤務Bさん(28才)には勿論ここで何か賢いことを言って血液型まみれの女の子達を気分よく盛り上げる役が振られている訳ですが、悪いことはいわないが「へぇ、元カノが全員B型だったんだよね」って「はああ?何このオッサン!?君の元カノの話なんか聞いてへんし!」と思われるのがオチやろう。「さも自分が相手に好意を抱いているような印象」を与える前に「この人なんか勘違いしてない?」と警戒される心配した方がええのと違うか。そもそもずっとつきあう気など最初からない相手に自分が好意を抱いているような印象与えてどうする。

ともかく、役割分担は決まっているのですよ。血液型性格診断を信じ込んじゃってる女性と話をあわせてあげる男性。逆はない。もとよりヘテロじゃないケースは眼中にない。酒の席で「君何型だっけ?B型?奇遇だね、僕もだよ」とか言ってくる上司をどうあしらうかなんて話はネタにならないし血液型話を振ってくる彼氏対策という記事にもお目にかかったことがない。5年ほど前にも全く同じことを書いたような気もするけどもう一度言っておこう、血液型話もうんざりだけど血液型で熱くなってる女の子とそれをうまくあしらうクールな男の子のお話はいい加減にしろ。まともに話の通じない相手とみて適当に合わせておくことが神回答とか笑わすな。コミュニケーションのゲームどころか端からコミュニケーション拒否しとるがな。

それ以外の突っ込みどころについては簡単に。

血液型性格診断が正しいかどうかは別にして、私たちは血液型性格診断とは無縁な生活を送れない社会にいるのです。

この記事で「正しい」と言っているのは科学的根拠があるかどうかだけで、科学的根拠があろうがなかろうが血液型差別はいかんという視点が皆無では話にならない。そして確かに差別と無縁な生活は送れないが、送れないからといって嬉々として加担してよいことにはならない。

特に、血液型診断で「性格にクセがある」と言われがちなB型の女性は言われると喜びやすいですね。「この人はB型の私に対してもネガティブなイメージを持たないんだな」って勝手に脳内で解釈してくれますから。

「B型がこう言われている」ということを前提として容認している自分は問題ないのか。自分以外の多数派はB型を差別するはずというのもその裏返し。「言われると喜びやすい」と抑圧を取り除く努力はしないまま抑圧されてそうな人に僕は別だよと秋波を送る。しかもわざわざ嘘をつく。抑圧されている人は自分だけが特別扱いされたいんじゃない。抑圧そのものをなくせよ。せめてなくす努力をしろよ。まあ「日本人は血液型診断が大好き」とか言ってる時点で何をかいわんやではあるのだが。

少しだけ「ズルさ」も含まれるのかもしれませんが、相手を不快にさせるよりは誠実な態度と2人は語ってくれました。

どこを取ってもひとかけらの誠実な態度もないのですが、結論としては興味のない話題は適当にわかった振りしてスルーしておけということでしょうか。案外ウザい上司対策にも役に立つ代物だったのか。

ネタやがな、は許さない。自分はメタに立って差別してるのは俺じゃないよと予防線を張った上で差別を助長する。最低やな、と評価しておきたい。