とうとか書いたオノマトペ

オノマトペというものは広く知られているより、また辞書や方言辞典に載っているよりずっと多様である。例えば、先日実家に帰ったときの私自身の会話から採集するとこんなのだった。

テーと行く。(「○○ちゃんは?」「あそこ、テーといかんす」)
こっきり食べる。(「ごはんある?」「お父さんがこっきり食てまんたで」)
とうとか死ぬ。(「××さんは?」「とうとか死なあた」)
がーいとする。(子どもなどに「ほんながーいとしたらあかん」)

「テーと」は「テーと」としかいいようがないのだが、敢えて解説するなら「颯爽と」か。自転車や走ったりで軽快にすばやく移動するさま。もしくは「とっとと」に似たニュアンスもあるが通常「行く」にしかつかない。「テーとしろ」は言えない。

「こっきり」は「完全に、ことごとく」。一回こっきりとかのこっきりとは異なる。

「とうとか」または「とうどか」は「とうとう」「終に」

「がーいとする」は、子どもや赤ちゃんが物をぐちゃぐちゃにしてしまうこと。お母さんが綺麗にセットした髪を子どもが抱き上げた途端にがーいとしたり、テーブルの上のおかずをがーいとしたり。

文献をきっちり調べた訳ではないが、手元の方言の本などには載っていないのを挙げてみた。地元の人なら誰でもわかる言葉なのに方言辞典などに拾われないのは、当たり前すぎて使っていることすら意識されていないからだと思う。

[あとで書く]タグをつけて放置していたら元記事が消えてしまったのだが、「ビールがキンキンに冷える」などでNHKのニュースが話題になった記事で、最近新しく出てきた言い方というようなニュアンスで取り上げられていた。(元ネタはこれ(pdf)か)しかしオノマトペはたぶん一般に認識されているよりももっとずっと多様である。パソコンはパソコンがない時代にはサクサク動くことはなかっただろうが、サクサクだのキンキンだのは案外その辺のじいちゃんやばあちゃんが畑で使っていてもおかしくないように思う。ある地方と他の地方で別々に伝わっている言葉にはどっちが本来もないだろう。ある用法が全国的に広がることは、必ずしもなかったものができたとか元はこうだったものが変化したとは限らない。そこにあったものが可視化された(最近は見える化というらしいが)とか、マイナーだったものがメジャーになっただけということもあり、ずっとそのことばを使っている人にとっては何も変わらないということでもありうる。

ということで、オノマトペを私はこっそり採集している。何もこっそりする必要はないのだが、コレクションというものは隠して楽しむものである。特に同好の士を求めてはいないが、誰にでもできて一円もかからない趣味なので興味のある方にはお勧めしたいと思う。