放置したブクマコメントを掘り返す

2ヶ月近くも放置プレイしてしまった。私は放置されるのは好きだが放置するのは別に好きではない。残念ながら好きなことだけして生きる境地にはまだ達していないのである。

さて、放置して何がいかんかといえば、話がリセットされてしまうことであろう。何度も続き物を書きかけながらそのたびに放置するばかりか怒涛の更新などとうそぶいてはばからない人もいるがあまり他人のことは言えない現状、ぼちぼち借金を返していきたいと思う。その一つとして
私はここで「後でなんか書こ」と書いた。それを今書く。

上記のブックマークで、私は自分もコメントしているがさらにid:blackshadowさんの下記のコメントに星をつけている。

最近竹内とか福岡とかはむしろ良い試金石になると考えるように。この辺にあっさり感化される人間はそのロジカルシンキングクリティカルシンキングの程度もたかがしれているから。

今数えたら私を含む8人が星をつけている。このブクマコメントを書いた黒影さん(お話したことはないがブログは拝見しているのでこう呼ばせていただきます)を始め、星をつけた人々はこんなことを言ったり星をつけた以上は自分はロジカルシンキングクリティカルシンキングも「たかがしれていない」程度にできていると考えているに違いない。私の予想ではそのとおりと答えてくれそうな面々(ふだんのブクマやブログを拝見している限り)ばかりで、特に学究に携わっていらっしゃる方々にとっては当然のことでもある。

ロジカルシンキング、つまり論理的に考えるということは、ほうっておいてもできることではない。できる人もいるだろうが人間はむしろ本来非合理な感情的なええ加減な適当なものだと考えたほうが現状に近い気がする。ともあれ、ほうっておいてもできることではないが、ちょっと訓練をすれば基本的なことは誰でも身につけられる、いわば読み書きそろばんみたいなもんだと私は考えている。学究に携わる人には当然と書いたのは、論理的に考えることは学問の垣根を越えてどんな学問をするにあたっても、文系だろうが理系だろうが、偉い先生だろうがペーペーの学生だろうが、論文を書いたり議論をする上では必須不可欠のものだと考えるからである。

ではさしあたって学問をするわけでもない人間が論理的に考えることができて何が得になるか。これがつまり上に黒影さんが書いている「試金石」の話になる。自分の専門分野以外のことに関心を持ったり何か面白そうな話題がある時、その情報源がどのぐらい信用できるのか門外漢にはわからないことはよくある。単に人目を引きそうな面白おかしいネタなら誰でも書ける。この話、素人から見て面白いけど信用していいの?という時に、全く門外漢の話題であってもある程度著者が信用できるかどうかを見極められる指標の一つがロジカルシンキング、論理的思考ができるかどうかということである。

繰り返し強調してきたように、論理的であるかどうかは原則として話の中身を問わないのだから、Aを否定しようとしてAによく似たBを否定してたり、AならばBという話がいつの間にかAだろうがAでなかろうがBという話になってたりすれば、話の中身が生物だろうが地学だろうが物理だろうが言語学だろうが、専門知識に関係なく著者が論理的ではないということは素人にも明らかになる。すべてにおいて論理的である必要はないが、少なくとも論理的であることが必要とされる場面(たとえば門外漢に対して専門的な知識をわかりやすく解説するとき)において論理的ではないならば、その著者のロジカルシンキングは「たかがしれている」と考えるのは妥当なところだろう。なお、黒影さんが言っているのは著者の話ではなく「この辺にあっさり感化される人間」である。つまり、ロジカルシンキングができなさそうな書き手を見てそれを見抜けないばかりかあっさり感化されてしまうようでは読み手のロジカルシンキングもたかがしれているという訳である。

誰のどんな言説を評価しているかでその人自身も評価される。どんな言説かが一番大事なのであって誰が言ったかは二の次ではあるのだが、実は「誰」かで大体見当がついてしまう。論理的思考がめちゃくちゃな人は今回も前回も次回もめちゃくちゃであることが多いから。

とはいえ、誰もが論理的思考について「ちょっと訓練」しなければならない訳ではない。高校までではまずやらないし大学でも論理学の入門書を読むか授業を取るかしなければ縁がなく終わってしまうことも多々あると思う。私は論理学のごくごく初歩のところについてちょっと説明してほしいという友人知人たちにむけてこれを書いているのだが、論理なんかやる具体的なメリットの一つとして、このからくりをある程度見通せるようになれば怪しい言説にひっかかることが少なくなる、自分である程度判断できるようになるということを挙げておきたいと思う。私もずぶの素人の域を出ないから偉そうなことを書きつつも素人にわからないところまでは進んでいかない(いけない)ので、素人のお友達の皆さんぼちぼちご一緒に勉強して参りましょう。

以下余談
アフィリエイトたらいうもんを始めてみることにした。手始めに、私が初めて論理学に触れたきっかけになった教科書を挙げておく。これは論理学の教科書ではなくて言語学の意味論の教科書なのだけれど、これで論理にはまって世界が様相を変える体験をしたことが私の人生のターニングポイントになった。ただし、この本は言語学か論理学の一般的な知識がない人にはお薦めできません。初心者向けのやさしくて面白い論理学の本はまたぼちぼち紹介していきたいと思います。

意味論 (1) (日英語対照による英語学演習シリーズ (5))

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