もしもこの世に毛髪がなかったら

ハゲという概念はないかというとそんなことはない。やはりペンキはハゲるだろうし。毛髪はなくても他のところの毛はあるかもしれないし。

美容院は商売上がったりになるかといえばそんなこともない。たぶん地肌に直接絵を描いたり刺青したりが流行るのではないか。もしくはつるつるな方が偉いってことになってより一層つるつるすべすべのお頭をキープする化粧品が売れる。その場合、お頭の曲がり角は35歳ぐらいである。

お風呂の排水溝を洗うのは楽になるだろうか。あれはたくさんの毛髪の中に少し違う毛も混じってるのを掃除するものだという先入観があるが、毛髪が全然なくて違う毛ばっかりだったら嫌な気もする。しかし、それはそれでそっちが当たり前になるのだから、たぶん毛髪がどわっとある方が不気味に見えるだろう。

私はたぶん美人になる。それというのも、世の中には髪型が残念な人というのがいて、そういう人はたいがいどんな髪型をしていても決して垢抜けない、いっそ髪がないほうがましなんじゃないかと思われるのである。だから今髪があってそのせいで見栄えがよくなっている人は髪がなかったらマイナスになるかもしれないが、髪のせいでマイナスになっている人はマイナスがなくなるんだからその分必ずプラスになるはず。だから今ハゲている人も決して悲観することはない。もしかしたらあなたにとってはそれは一番のプラスなのかもしれない。

それはともかく、

本人の意向を完全に無視して最適な髪型に勝手にカットしてくれる美容院というのを夢想する。

私も「美容院での会話が苦手な人」なのだが、世間話が苦手だとかプライバシーをしゃべりたくないというのではない。その前の、「今日はどうなさいますか?」が困るのだ。

「今日はどうなさいますか」
「えっと、適当に...」
「分け目はどこですか」
「さあ....」
「前髪はどうしますか」
「あの...どうでもいいです...」
「カラーはどうしますか」
「(横を見て)あの人と同じのにしてください」

美容院にいくたびにそんな会話をしてしまう私はしばしば、本気で髪のないユートピアを夢想するのである。

以下余談。今回の美容院での収穫は「ガチャック」であった。100円入れるとがちゃがちゃっとカプセルが出てくるやつ。あれのことをなんといいますか?私は「ガッチャンゴロゴロ」というんですけどね。知人は「ガシャポン」と言ってました。美容院で「女性自身」を読んでいたら「ガチャック」というのが出てきて、「ック」というのはどっから出てきたのか気になるところですが貴重なサンプル採集ができました。