縁談その後

その後ってもその前はないんですけどね。

何が一番問題ってこの件、当事者たる私の意向は一顧だにされていないところである。私らの若い頃であれば当人の与り知らないところにお見合いの話がくるなんてのはまだまだよくあることでしたが最低限の条件として「結婚相手を探している」人のところにもっていってほしいよね、縁談というのはね。ということで1ミリも結婚相手を探してなどいない私のところに縁談がやってきたのであるが、どうもこれ、私のみならず相手の意向も聞いてないんじゃないかという気がする。相手の親が息子が結婚しないので長年心を痛めていて、この際誰でもよいという訳ではないが、本人以上に切実なのは知っている。仲介者の話によると、相手の幼馴染は気が弱くて声をかけられないだろうから私の方から声をかけてやってくれないかということだった。

相手は同級生なのだが、さすがにアラフィフにもなって自分から声をかけられないならもう探すなよ。相手から声をかけてくださいとか、中高生なら知らず老境に入らんとしているいい大人が言うことではない。たぶんその人はそんなアホなリクエストをする人ではない。恐らく、仲介者が勝手に言っているのである。凄いよね、こっちは全くひとかけらも結婚相手を探していないんだよ?話をもってくるだけでもどうかと思うのにそっちから声かけろって。

うちの親もいい加減にして欲しいのだが、何がいかんって実家は汚宅なのである。しかも田舎なので旅館かよってぐらい広い家が全部。遠くない将来にわしらにのしかかってくるであろうこの家の片付けにさらに他人を巻き込むつもりか。そしてそもそも、私みたいな初期不良の欠陥品を世間に出せると思っているのだろうか。(この後にいかに私が初期不良かを列記していたのだがあまりにしゃれになっていないので削除)

先方が幻想を見ているのはわかっている。私は田舎の小学校の優等生だったから。40年ほど前、田舎的には4年前ぐらいの感覚なのだろう。実は相手は非常に素敵な人で(40年前現在)、双方の親や仲介者が全くいないところであればデートぐらいするのは全然吝かでないのだが、ひとかけらでも高齢の親たちに期待を抱かせてはいけない。触らないのが無難である。

仲介者の目に映る彼はとてもよい人なのだが気の弱いところがありよいご縁がなく今まで来てしまって『結婚できなくてかわいそう』なのである。この辺が少し周りの高齢者に聞き取り調査して見えてきた親や仲介者の理屈だった。うちの親は何も言わないが、たまに漏らすのは「年取って一人になったら寂しくないか」というようなことである。今一人で寂しくないのに年とって急に寂しくなるというのもわからないが、だいたい長年連れ添ってたって普通はどっちか先に死ぬんだし残されたほうもそのうち死ぬ。一人で生きて一人で死ねばよいではないか。

パートナーシップは特に否定しないし制度としての結婚にはなんの興味もないがアラブの石油王ぐらいお金がある人だったら結婚してもいいのだが、実は私はリア友にアラブの石油王の息子がいて京都も案内したぐらいなのだが、あれも楽じゃないらしいよ。その人は成功しているので何十人もいるきょうだい(ちなみにお母さんが10人ぐらいいる。父の妻ということでお母さん)から親戚からみんな面倒みなくちゃいけないらしい。成功者はみんなに還元しろってことで、アラブの石油資本は社会主義で回っている。なんの話だったっけ、そうだ、結婚話を望んでない人にもってくるおばちゃんの価値観はよい人なのに結婚できない『かわいそう』ということだった。

大体こんなとこを読んでいる人の8割ぐらいは『かわいそう』なので言っておきますが、特に田舎をもってる人ね、敵は手ごわいよ。だってもうじき死ぬんだもの。相手の親もうちの親も仲介者もおそらくは10年かそこらで。でも死ぬ前に安心させてやりたいとかそういう悪魔のささやきに耳を傾けてはいけない。あなたが今更結婚したところでしょせんうまくいかなくて、今までは自分の親との間だけで済んでいた抗争が相手の親きょうだいも交えてのバトルになって心配かけたまま死なせたほうがなんぼかましやった、という結果になるというかそれ以外の結果は見えないのだから。

縁談をもってくるおばちゃんに告ぐ。無駄な抵抗はやめろ。『かわいそう』と『かわいそう』をくっつけたところで出てくるものは『もっとかわいそう』である。せめて死ぬ前にこの世には本人の意向というものがあるのだと、何それ食えるのと思うかも知れないが食えませんよ、あいつらの人生もそれはそれで面白いのではないかと、信じられないかもしれないけれど思ってみてはいかがでしょうか。

ああ疲れた。もう今日は昼寝しよう。